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物価とスライドして上昇していく経費。Respo予約台帳導入でコストを抑えながらもオペレーションの負荷が軽減(喫茶室baton)

青森県の南西部、弘前藩の城下町として栄えた弘前市。弘前城跡、弘前公園の一角に設える弘前市民会館は近代建築の巨匠、前川國男の設計による歴史的建造物です。音楽や舞台芸能を開催する大ホールや多目的室が併設され、文化発信の拠点として多くの人が集います。 館内で唯一のカフェテリア「喫茶室baton」さんは洗練された昭和モダンな空間で来館者に非日常の空間を提供しています。繁忙期には2時間待ちとなる人気店ですが、Respo by AutoReserve(以下「Respo」)の予約台帳の導入によりオペレーションの負荷が軽減されたとのこと。導入のきっかけや、物価高に伴う経営の現状について経営者の漆舘斉さんにお話を伺いました。
作成日:2024年3月6日
更新日:2024年12月27日
物価とスライドして上昇していく経費。Respo予約台帳導入でコストを抑えながらもオペレーションの負荷が軽減(喫茶室baton)
目次

歴史と文化を内包する上質な空間を提供

―――館内の中二階、ステンドグラスの採光が差し込む幻想的な空間に浮かぶような店構えですね。開業時期を教えてください。
ここ弘前市民会館は東京の上野公園にあります東京文化会館と同じ、前川國男による設計です。竣工は1964年ですが、官庁の方針や時流とともに建築当初の色使いや仕様は幾度となく手が加えられてきたようです。開館50周年に向けて2013年、建物の老朽化に加えて、建築学的な価値に鑑み、設計当時の昭和の古き良き建物の色味や趣を取り戻そうと1年がかりの大規模な改修工事が行われました。その際、館内に新たに食堂を設ける公募があり、コンペを経て2014年から「喫茶室baton」を営業させていただいております。ステンドグラスは開館50周年の記念に制作された洋画家・佐野ぬい氏が特別に描き下ろした「青の時間」という作品です。
―――「喫茶室baton」、店名の由来は建築にちなんだものですか?
「baton」という店名は、コンサートホールのバトンという装置から着想を得ています。バトンはステージ上に背景やライトを吊り下げるポールのことで、客席からは見えない装置ですが、ステージを完成させるためには欠かせない存在です。喫茶室は館内での音楽や舞台芸能の鑑賞への高揚感や余韻を楽しむ場所として利用されます。そのようなコンサートホールに欠かせない要素を象徴する名前として、「喫茶室baton」と名づけました。店内は、昭和モダンといいますか、設計者である前川國男の意思を汲んだ当時の佇まいや雰囲気を壊さないよう昭和のレストランや喫茶店をなぞらえています。
―――どのようなお客様がいらっしゃいますか?
年代は30代から70代ぐらい、圧倒的に女性のお客様が多いですね。営業時間は11時~17時なのでライブや舞台鑑賞の前に食事や喫茶を愉しんでいただいているようです。会館は弘前公園内にありますので、3月から11月ごろまでは繁忙期となり、観光のお客様も多くご利用されます。
―――人気のメニューはありますか?
メニューについては昭和の時代を再現するようなコンセプトで展開していまして、ナポリタンやビーフシチューは開店当初から好評いただいています。青森県産の林檎などのフルーツを添えたパンケーキや、ロビーのステンドグラス「青の時間」をモチーフにした五色のゼリーポンチなどもInstagramなどで紹介されることが多いですね。

全体の3割に設定した予約枠はすぐに埋まってしまう人気店

―――予約してから来店されるお客様は何割ですか?
自社のルールを設けていまして、予約は最大でも席数32席のうち3割程度にしようと決めています。おかげさまで連日、予約枠はいっぱいとなっています。オンライン予約はオートリザーブさんのシステムだけを使用、オンライン予約と電話予約は半々くらいだと思います。
―――予約枠を最大でも3割程度に設定している理由について教えてください。
週末や3月から11月の繁忙期は地元の方だけでなく多くの観光のお客様にもご来店いただくため、フリーでいらっしゃるお客様のために残り7割は予約を入れずにお席を用意しています。繁忙期には11時の開店時にすでに待合いの列ができている状況で、桜のシーズンともなると、開店と同時に2時間待ちということも珍しくありません。東京の方は驚かないかもしれませんが、地方では待ち時間が60分以上という状況には慣れていませんから厳しいものがありますよね。整理券をお配りして公園内のお城探索などにお出かけしていただき、順番が来たら電話で呼び出しをしています。
―――Respo予約台帳を導入するきっかけはありましたか?
オートリザーブさんを知ったのは、店舗に予約リクエストの電話が入ったことでした。キッチンとホール合わせて10名で運営しているのですが、10名のうち半数はキッチンへ、他に入り口の案内に少なくとも1名はとられます。オートリザーブさんの予約リクエストは多くいただいていたものの、店舗運営が忙しく電話対応が大変だと感じていたこともあり、こちらから問い合わせをしたのが始まりでした。担当の方からシステムについて丁寧に説明していただき、月額利用料は無料、アプリで予約管理ができること、予約キャンセル料の徴収も可能というRespo予約台帳に興味をもちまして。これは導入した方が良いだろうと思いました。
予約台帳
予約管理を自動でスマートに

情報の一元化によりオペレーションの負荷が軽減

―――これまで予約台帳はどのように管理されていたのでしょうか?
予約については開店当初からずっと紙ベースで管理していました。紙のメリットは必ず記録が残ること、いつ、どのように変更になったか履歴をたどることができる点だと思います。その点ではアナログの方が勝るのではないかと当初は考えたのですが、実際にオートリザーブさんの予約台帳を使い始めてその差はほとんどないと思います。
―――これまで社内の情報共有はどのようにしていましたか?
紙の予約台帳と、LINEグループ内で変更された情報について共有していました。飲食業はシフト制のためスタッフの出勤時間が異なるので、スタッフ全員でのミーティングがやりづらいんです。遅出のスタッフが出勤した時にはピークの忙しさということもありますので、口頭ではなかなか情報共有しづらい。現在もLINEグループは連絡網として活用していますが、予約台帳を導入したことでスタッフはiPadを開いて最新の情報を確認することがルーティンになっています。オンライン予約に変更があると登録したアカウントに通知メールが届きますので、それをスタッフ間で共有することができますし、1ヶ月先までの予約状況も見やすいので業務の効率は良くなったようです。電話予約についてもRespo予約台帳に一元化できるのでオペレーションに負荷がかからなくなったと思います。
これからの繁忙期は電話予約が多くなるのですが、予約枠がいっぱいでお断りをしなければならないことも少なくありません。当店のInstagram上にAutoReserveのリンクを貼っています。オンライン予約の比率が上がると店舗経営の上では助かるので期待しています。 ―――サポート体制についてはいかがでしょうか。
今のところトラブルはないのでサポートをお願いすることもなく利用しています。他社サービスでは長らく更新が滞っているという話を聞きますが、オートリザーブさんは仕様の変更などがあると事前に案内が来ますし、今のところストレスはないですね。無料で利用していることが申し訳ないくらいですよ。
予約台帳
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変わらないものと変えていくべきものを見極めるチャンス

―――今後の展望についてお聞かせください。
経営的な話になりますが、昨今の物価高によって、いずれあらゆるものの物価が上がっていくと予想されていますが、売価設定が物価のスライドに追いついていない状況と感じます。コロナが明けて、物価高により値上げをした影響で売上高は増えたのですが、利益幅は減少しています。当店でも3月に価格改定をしてメニュー構成を大幅に変える予定ですが、まずはそれを成功させなければいけないと思っています。
新しいメニューに関しては、お客様に支持されるかどうか、しばらくは様子を見ながらやっていくことになろうかと思います。看板メニューのナポリタンやビーフシチューも、これまでお客様の反応を見て、盛り付けや提供方法などを探りながら改良を重ねてきました。今の味付けにたどり着くまで3年かかりました。3年かけて残ったものは自信を持って自分たちの定番だと言えるんです。開発から提供、お客様の反応をみながら改良を加えて安定するまでには時間がかかりますよね。
―――物価高やコロナ禍を経て、お客様の反応はいかがでしょうか?
リピーターのお客様が多く、今のところネガティブな反応はありませんので値上げ幅に関しては支持していただいていると思います。価格が上がった分は料理のクオリティが上がるような仕上がりにもっていかなければなりません。
すでに首都圏では多くの飲食店で始まっていると思いますが、商品の値上げに手を出さざるを得ないでしょう。そして、お客様にもそれに慣れていただかなければなりません。これからも安定した経営を目指すためには、きちんと利益を確保して、新しい価格やサービスに満足していただけるお客様に対してアプローチをしていく。お客さまも棲み分けの時代といえるかもしれません。
―――これから経営の在り方は変わってくるでしょうか?
そうですね。これまではきちんと利益が取れていたので、いろいろなサービスを導入して店舗経営を進めることができました。例えば、システムを導入するには利用料がかかります。人によるサービスをシステム化することで質の向上や、業務の効率化につながるのであれば積極的に経費をかけてでも新たなものを導入しようと思っていました。ところが、物価高により物価とスライドして経費はどんどん上がります。システムにかかる費用を換算していくと経費の足かせになってしまうんですよね。その結果、余分なシステムの見直しや、メニューの原価にも手を出さざるを得ない状況となります。経費の中身を分解して考える時期にきているように思います。

利益はベースアップとして還元し、好循環な仕組み作りを

―――経費の見直しや、原価を抑えるためにどのような取り組みをされていますか?
今までは人の手間や時間といったコストを減らすために、ソースなどはまとめて作っていただくようメーカーに発注していたのですが、それらの外注品を今度は内製化していこうと考えています。まさに原点回帰ですよね。
新しいメニューを自分たちで開発しながら、商品作りもしていく。時間は必要ですが、個々のスタッフのスキルも上がりますし、それが繋がれば経営面でも振り幅が大きく出てくれるんじゃないのかなと。とはいえ、店のコンセプトは曲げずに昭和の良き時代のスタイルを保ちつつ、時間や空間を愉しんでいただけるようお客様に支持されるメニューを提供するという思いは変わりません。時間と手間はかかりますが、どれだけ良いものができているか楽しみでもあるし、店の変化、成長でもあるのかなと思います。
―――この機会をポジティブなきっかけとして捉えていらっしゃいますか?
ネガティブに捉えてしまうと、どんどん暗くなる一方なので、この機会に良い方向に進むように取り組んでいくだけですね。お客様には不便をかけないよう、 これからもお客様が喜ばれる方向ってなんだろうと常に考え続けていますが、今はまだ手探りの状態。1年後、きちんと利益が出ていれば進んでいた道は間違っていなかったと安心できるのかもしれません。
利益はスタッフに還元していきます。人の確保や育成が難しい時代なので、売り上げは会社の利益というよりも人件費として給与のベースアップにつなげていかなければと思います。働いていてプライドが持てることと、やりがいがあること。今日も仕事をやってよかったと、サービスが報われるような方向に繋げていかないといけない。 綺麗事に聞こえるかもしれませんが、現場でサービス業を担う人たちが頑張ってやっていけるような仕組みを経営者は作っていかなければならないと思います。

店舗情報

喫茶室baton
住所:青森県弘前市下白銀町1-6 弘前市民会館 2F 電話番号:0172-88-8928 店舗詳細:https://autoreserve.com/restaurants/pQ3LBgrgqZgG8yQ1dNHT