開業に必要な「資格・許可・届出」の全体像
開業前に通る手続きは「資格」「許可」「届出」の3種類です。全店舗に共通して必要なのは、次の通りです。
- 資格:食品衛生責任者(講習1日で取得。全店必須)
- 許可:飲食店営業許可(保健所へ申請。着工前の事前相談が鍵)
- 届出:防火対象物使用開始届(消防署)と、開業届/法人設立届(税務署)
防火管理者の選任や深夜営業の届出などは、店舗の規模・業態・事業形態によって必要かどうかが決まります。
自分の店に何が必要かは、記事末尾の一覧表で確認できます。以下では「1. 資格」「2. 許可」「3. 届出」の順に整理していきます。
1. 飲食店開業に必要な「資格」とは
まず、法律上、飲食店の開業に必要な資格は原則2つです。
- 食品衛生責任者(全ての飲食店で必須)
- 防火管理者(収容人数30人以上の店舗で必須)
よく話題に上がる調理師免許は「持っていると調理師と名乗れる」資格です。持っていなくても、調理すること自体は誰でもできます。つまり、店舗の規模次第ですが、食品衛生責任者さえ取得していれば、調理師免許なしで開業・調理が可能なのです。
2つの資格のどちらが必要かは、店舗の規模(収容人数)によって決まります。この後のセクションで、それぞれを詳しく見ていきます。
1-1. 飲食店開業に必須の「食品衛生責任者」について
食品衛生責任者とは
食品衛生責任者は、飲食店を含む全ての食品取扱施設で、各施設に1名の設置が義務づけられています。食品の衛生管理を担う役割で、保健所への営業許可申請の際にも資格証明書の提出が求められます。
取得方法はとてもシンプルです。各都道府県の食品衛生協会が主催する講習を1日(約6時間)受講するだけ。合否を決める試験はありません。。受講さえすれば、全員が取得できます。
- 費用: 約10,000円前後(都道府県により異なる)
- 難易度: 低い(講習受講のみ、試験なし)
- 免除対象: 調理師・栄養士・薬剤師等の資格を既にお持ちの方は受講が免除されます

Kommentar des Vorgesetzten
講習の予約が混み合う時期があります。特に春(3〜4月)は開業シーズンと重なるため、満員になるケースも。余裕をもって、できれば開業予定の3ヶ月前には申し込みましょう。
調理師免許は開業に必須ではない
念の為、ここは少し掘り下げておきましょう。調理師免許は「名称独占資格」という種類の資格です。つまり、その資格を持つ人だけが「調理師」と名乗れる、というだけです。調理そのものは誰でも行えます。
※調理師免許を既に持っている方は講習を受けずに食品衛生責任者になることが可能です
| 食品衛生責任者 | 調理師免許 | |
|---|---|---|
| 開業に必要か | 必須(各店1名) | 不要 |
| 取得方法 | 講習1日(約6時間) | 専門学校 or 試験合谷 |
| 難易度 | 低い(講習受講のみ) | 高い(試験あり) |
| 費用 | 約1万円 | 数十万〜(専門学校の場合) |
調理師免許は飲食店の開業に法律上必須ではありませんが、日本政策金融公庫などへの融資面談の際、「料理の技術・経験の証明」として評価されることもあるようです。資金調達を検討している方は、その観点から取得を検討する価値はあるかもしれません。
ただし、融資面談の際には、飲食店での就業経験やその際の実績などで評価をしてもらえることもあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

飲食店の融資面談で聞かれること|担当者が評価する回答例とポイント
飲食店開業では多くの人にとって必須の「融資面談」。金融機関の担当者は何を見て、どんな質問をするのか?自己資金の出所の見せ方や事業への熱意の伝え方、具体的な回答例まで、審査を通過するための準備と面談時のポイントを分かりやすく解説します。
1-2. 収容人数30人以上で必須の「防火管理者」について
防火管理者は、消防法に基づいて、収容人数が30人以上の店舗で設置が義務づけられています。火災の防止や避難訓練の実施など、施設内の防火管理を担う役割です。
ここで「収容人数」の計算方法を確認しておきましょう。
「客席が30席未満だから大丈夫」とは限りません。収容人数は客席の座席数だけでなく、厨房スタッフを含む従業員数も合計して計算します。小さな店舗でも、スタッフ人数次第では30人を超えることがあります。
防火管理者には甲種と乙種があります。大規模施設(収容300人以上)には甲種が必要ですが、多くの飲食店は乙種で対応できます。
- 乙種: 収容人数300人未満の施設向け。講習1日で取得可能
- 甲種: 収容人数300人以上の大規模施設向け。講習2日
- 費用目安: 5,000〜8,000円程度
- 申込先: 各地域の消防署または消防設備士協会
収容人数30人に満たない小規模店舗であれば、防火管理者の選任は不要です。ただし、計算を誤りやすい項目なので、念のため管轄の消防署に確認しておくと安心です。
2. 飲食店開業に必要な許可とは
資格の次は、許可の話です。詳細の説明の前に、混同しやすい許可と届出の2つの概念を整理しておきます。
「許可」と「届出」は似ていますが、意味が全く異なります。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 許可 | 行政機関が審査し、基準を満たした場合にのみ認めてもらえるものです。開業前に取得が必要で、許可が下りるまで営業できません。 |
| 届出 | 行政機関に「こういうことをします」と通知するものです。審査はなく、提出した時点で完了です。 |
飲食店開業における最重要手続きは、保健所への「飲食店営業許可」の取得です。その周辺に、消防署や税務署への各種届出が付随してくる構造です。
2-1. 保健所への「飲食店営業許可」申請
飲食店営業許可(必須)とは
飲食店を営業するには、食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」が必須です。申請先は、店舗が所在する地域を管轄する保健所です。この許可を取得せずに営業した場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金という罰則が定められています。
手続きには時間がかかります。申請から許可書の交付まで、概ね2週間〜(自治体によって差があります)。開業希望日の1ヶ月前には申請を完了させておくのが安心です。
飲食店営業許可の申請の流れ

保健所への営業許可申請は、大きく5つのステップで進みます。最初から最後まで目を通してから動き始めると、全体の流れが掴みやすくなります。
ステップ1: 事前相談(着工前)
内装工事を始める前に、設計図面を持って管轄の保健所を訪問します。「この設計で施設基準を満たしているか」を事前に確認してもらう作業です。

Kommentar des Vorgesetzten
事前に相談せずに工事を進めてしまい、完成後に設計変更を求められるケースがあります。例えば、手洗い設備が不足している場合、水道管の引き直しなど大掛かりな工事になる可能性もあります。費用・時間共にも大きなロスに繋がりますので、着工前の事前相談をおすすめします。
ステップ2: 内装工事
保健所からのフィードバックを元に、設計に反映しましょう。その上で施工を進めます。

Kommentar des Vorgesetzten
居抜き物件の場合に、ステップ1と2を省略してしまうケースがあります。居抜き物件と言えど、シンクや排水管が外されていて、やり直しが発生してしまったケースもあるので、注意するようにしましょう。
ステップ3: 申請書類の提出
工事完了後、必要書類をそろえて保健所に提出します。主な提出書類は以下の通りです。
- 営業許可申請書
- 施設の平面図
- 食品衛生責任者の資格証明書(取得済みのもの)
申請手数料は、自治体によりますが、おおよそ1万5,000円〜2万円程度かかります。
ステップ4: 施設検査
保健所の職員が実際に店舗を訪問し、施設基準を満たしているかを確認します。この検査を合格すれば、許可書が交付されます。
ステップ5: 許可書交付・開業
問題なければ許可書が交付され、開業に一歩近づくことができます。
申請に必要な書類・施設基準
施設基準は自治体によって差がありますが、主な確認ポイントは以下です。
- 調理場と客席の適切な区画
- 調理用と手洗い用の2槽式シンク(またはそれに準じる設備)
- 食品の適切な保管設備(冷蔵庫等)
- 従業員専用の手洗い設備

Kommentar des Vorgesetzten
営業許可の申請書類の書式、手数料、条例による施設基準(キッチンの設備など)は自治体(保健所)によって異なります。実際に、2槽式シンクについては、ある都道府県では当時必要で、他では不要だったことがありました。必ず管轄の保健所で確認しましょう
3. 飲食店開業に必要は消防署・税務署への「届出」
3-1. 消防署へ提出する「防火対象物使用開始届」について
防火対象物使用開始届とは
開業する際は、内装工事の有無(居抜き物件など)にかかわらず、基本的には「防火対象物使用開始届」の提出が必須です。この届出は、消防署が「火災責任者(使用者)の変更」と「火災リスク(業態や設備の変更の伴う)」を正確に把握するためのものだからです。
この届出は使用を始める7日前までに、その内容を消防署に提出する必要がありますので、ご注意ください。
また、飲食店は火を使う業態であるため、内装材に防炎規制がかかる場合があります。内装業者と打ち合わせる際に、使用する内装材が防炎基準を満たしているかも確認しておくと安心です。
自動火災報知設備等の消防用設備の設置義務がある場合は、別途消防検査も必要になります。これも工事前に消防署へ確認しておくことをお勧めします。
また、工事が伴う場合には「防火対象物工事等計画届出」も必要になります。
こちらは工事の7日前に提出する必要がありますので、ご注意ください。
3-2. 税務署・都道府県への届出
手続きの終盤、忘れがちなのが税務署への届出です。
個人事業主として開業する場合
- 個人事業の開業届出書: 開業後1ヶ月以内に、管轄の税務署へ提出します
- 青色申告承認申請書: 開業届と同時に提出することを強くお勧めします

Kommentar des Vorgesetzten
白色申告と青色申告では、最大65万円の所得控除に差がありますが、青色申告の申請には期限があり、開業後2ヶ月以内という期限を過ぎると、その年度は白色申告しかできません。開業届と必ずセットで提出しましょう。
法人として設立する場合
法人設立届出書を、法人設立後2ヶ月以内に税務署と都道府県に提出します(提出先が複数ある点にも注意)。
届出・許可・資格 一覧表
ここまで、必須の手続きを中心にお伝えしました。それ以外にも場合によっては必要な手続きもありますので、必要な店舗の情報と一緒に一覧表にまとめました。「自分の店舗に何が必要か」を確認するときの早見表として活用してください。
全員が必須
業態や規模にかかわらず、飲食店を開くなら誰もが通る手続きです。ここが抜けると開業できなかったり、後から別の対応が必要になったりする可能性があります。
| 手続きの種類 | 分類 | 提出先 | タイミング | 見落としポイント |
|---|---|---|---|---|
| 食品衛生責任者 | 資格 | 食品衛生協会(都道府県) | 開業前(早めに申込) | 講習予約が混む時期あり |
| 飲食店営業許可 | 許可 | 保健所 | 開業前(申請~取得2週間~) | 着工前に事前相談必須 |
| 防火対象物使用開始届 | 届出 | 消防署 | 利用開始7日前まで | 利用開始までに提出 |
| 開業届(個人)/法人設立届出書(法人) | 届出 | 税務署(法人は都道府県も) | 個人:開業後1ヶ月以内/法人:設立後2ヶ月以内 | 事業形態に応じてどちらかを必ず提出 |
場合によって必須
すべての店が対象ではありませんが、条件に当てはまれば必ず必要になります。「自分の店は対象か?」を必ず確認してください。
| 手続きの種類 | 分類 | 対象となる条件 | 提出先 | タイミング | 見落としポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 防火管理者選任 | 資格 | 収容人数30人以上 | 消防署 | 開業前 | 収容人数はスタッフ含む |
| 防火対象物工事等計画届出 | 届出 | 工事を伴う場合 | 消防署 | 工事の7日前まで | 防火対象物使用開始届とセットで提出 |
| 深夜酒類提供飲食店営業開始届 | 届出 | 深夜0時以降にアルコール提供 | 警察署 | 開業10日前まで | 提出先は保健所ではなく警察署 |
| 労働保険・雇用保険 | 届出 | 従業員を雇用する場合 | 労働基準監督署・ハローワーク | 雇用開始後速やかに | パート・アルバイトも条件次第で加入義務 |
任意だけど推奨
提出しなくても開業はできますが、出しておくと大きなメリットがあります。
| 手続きの種類 | 分類 | 提出先 | タイミング | 見落としポイント |
|---|---|---|---|---|
| 青色申告承認申請書 | 届出 | 税務署 | 開業後2ヶ月以内 | 最大65万円の所得控除。期限を過ぎると当年度は白色申告のみ |

Kommentar des Vorgesetzten
カフェで焼き菓子を販売する、精肉を扱う、深夜帯にバー営業をするなど、業態によっては上記に加えて追加の許可が必要になることがあります。私の場合は、ユッケなどの生肉を提供する予定だったので、別途許可を取得しました。管轄の保健所や警察署に早めにご確認ください。
許可・資格の準備が完了したら、次は店舗運営の準備へ
今回ご紹介した、保健所の営業許可取得などは基本的には各提出先とのやりとりなどが発生します。これらの許可・資格取得を進めていくと、あっという間にオープン日が近づいてきますので、同時並行で店舗運営のシステム選びを進めることをおすすめしています。
「許可が取れてから考えよう」と思っていると、こんな事態が起こりがちです。
- 開業初日、お客様の対応に追われて配席のオペレーションが混乱する
- POSレジが未設定のまま開業日を迎え、会計に時間がかかる
- 決済端末の導入工事が間に合わず、現金のみの対応を余儀なくされる
これらはすべて、オペレーションを整えるのを後回しにしたために起きることです。予約台帳・POSレジ・決済端末などの選定は、許可申請と並行して進めておくと、開業日に使える状態で迎えることができます。
開業前の運営システム選びに:Respo
開業前のシステム選びでよく聞く悩みが、「予約台帳・POSレジなどのシステムをそれぞれ別のサービスで契約すると、管理が煩雑になる」というものです。契約先も操作画面もバラバラで、スタッフへの教育コストもかさんでしまいます。
開業直後の忙しい時期には、これが想像以上の負担になります。
Respoは、予約台帳・POS・サイトコントローラー・セルフオーダーを一つのアプリに統合した、飲食店向けのオールインワンプラットフォームです。そしてこれらは完全無料で利用できます。
開業前の資格・許可手続きを進めながら、次は店舗オペレーションの準備へ。Respoなら、初期費用ゼロ・月額ゼロから始められるので、開業前の費用が集中する時期にも導入しやすい構造になっています。
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よくある質問(FAQ)
飲食店開業に調理師免許は必須ですか?
法律上は必須ではありません。飲食店の開業に必要なのは「食品衛生責任者」の設置です。調理師免許は名称独占資格であり、持っていなくても飲食店での調理・開業は可能です。ただし、融資申請時に技術・経験の証明として評価されることもあるため、資金調達を予定している方は取得を検討する価値があります。
食品衛生責任者はいつまでに取ればいいですか?
開業前に取得している必要があります。保健所への営業許可申請の際に資格証明書の提出が求められるため、遅くとも申請の1ヶ月前には取得しておくことをお勧めします。春の開業シーズンは講習の予約が混み合うこともあるため、できれば3ヶ月前には申し込んでおくと安心です。
保健所の営業許可申請はいつから始めればいいですか?
内装工事の着工前から保健所に事前相談を始めることを強くお勧めします。工事完了後に申請し、施設検査を経て許可書交付まで概ね2週間かかるため、開業希望日の1ヶ月以上前には申請を完了させるのが目安です。事前相談なしで工事を進めると、完成後に設計変更を求められるリスクがあります。
深夜に営業する飲食店は何か追加の手続きが必要ですか?
深夜0時以降にアルコールを提供する場合、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」を開業10日前までに所轄警察署へ提出する必要があります。「許可」ではなく「届出」であること、そして提出先が保健所ではなく警察署である点に注意が必要です。
個人で開業する場合と法人で開業する場合で、手続きの違いはありますか?
保健所への飲食店営業許可の取得や資格の取得は、個人・法人を問わず同じ手続きです。主な違いは税務・行政届出の部分にあります。個人事業主は税務署への「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出、法人は「法人設立届出書」を税務署・都道府県に提出(設立後2ヶ月以内)する必要があります。節税の観点では、個人の場合は青色申告承認申請書の同時提出を特にお勧めします。
開業前チェックリスト(資格・許可・届出 特化版)
一覧表と合わせて、時系列ごとのチェックリストも用意しました。自分は今どの段階にいるかを確認しながら、一つひとつ進めていただければと思います。
【資格】
- 食品衛生責任者の講習を申し込んだ(開業3ヶ月前〜)
- 食品衛生責任者の資格を取得した(開業1ヶ月前まで)
- 防火管理者が必要か確認した(収容人数計算済み)
- 必要な場合、防火管理者の講習を受講・選任した(開業前)
【許可】
- 管轄保健所に事前相談した(着工前)
- 保健所の施設基準を設計図面に反映した(着工前)
- 飲食店営業許可の申請書類を準備した(工事完了後)
- 保健所への許可申請を完了した(開業2〜3週間前)
- 施設検査を受検した
- 営業許可書を受領した(開業前)
【届出:消防】
- 防火対象物使用開始届を提出した(工事開始7日前まで)
- 消防用設備の検査を受けた(必要な場合)
【届出:税務・労務】
- 個人事業の開業届出書を提出した(開業後1ヶ月以内)
- 青色申告承認申請書を提出した(開業後2ヶ月以内)
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出した(該当する場合のみ)
- 雇用保険・労働保険の手続きをした(従業員がいる場合)
















