採用はなぜ失敗するか:期待と現実のズレ
経験者を採用したにもかかわらず、期待通りの成果が得られないケースは少なくありません。このような失敗は、単なるスキル不足が原因ではなく、「期待と現実のズレ」によるものが大半です。特に、オープン前や欠員補充など、時間の限られた採用活動は、自分の店の求める人物像であるかを評価する時間が不足しがちです。まずは、このようなミスマッチを防止するためのポイントを2つ紹介します。
ミスマッチの防止①:採用基準を明確にする
ミスマッチ防止の第一歩として、採用基準を明確にすることから始めましょう。アルバイト・社員であっても、自分の店で働くスタッフに必要な要件を言語化する必要があります。例えば、アルバイトであればシフトに対応できるかといった基本的なところから、「丁寧にコツコツ仕事をこなせるか」「お客さまに好印象を与えられるか」など具体的に落とし込むようにします。これらの基準が不明確だと、業務内容や働き方が合わず、本来の能力を発揮できず、お互いにとって不幸な結果となるでしょう。
ミスマッチの防止②:お店のことをきちんと伝える
店舗側においても、いい側面を出すだけでなく、仕事の厳しい側面や店舗の現状も正確に伝える必要があります。具体的には、残業やシフト変更の可能性、店舗として求める仕事の質や速さなどを誠実に伝えることで求職者側も自分の役割や求められることが具体的に理解できます。
特に経験者採用では、「言わなくても理解してくれる」という思い込みは危険です。経験者に対しても、お店のコンセプトやお客さまに提供したい時間、そのためのオペレーションや業務内容など、より具体的に説明する必要があります。開店準備など時間がない中でも、採用基準を妥協することなく情報をしっかり伝え、見極めるようにしましょう。
「素養」こそが強いチームを作る3つの理由
採用基準、自分の店の状況を明確にすることはミスマッチを防ぎますが、ここではその「採用基準」を更に具体的に考えます。接客や調理の経験・スキルを重視することは大事ですが、それよりも、素直であること、意欲を持って仕事ができるといった「素養」を重視することで、結果としてより強いチームを作ることが可能です。
「素直さ」は指示や改善点をまっすぐに受け止めること、「意欲」は自発的に動き、自ら技術を吸収・改善する姿勢と言い換えることができます。これらの要素は次の3つの理由からチームを強くすると考えられます。
1:スタッフが早く成長する
お店ごとに接客方法や調理などのオペレーションは当然異なるため、スタッフもそれらのやり方を理解して動くことが求められます。当然、忙しい営業中にすべてを教えることは難しいので、自発的に店のやり方を学びに行くこと、間違いをすぐに修正しようとする人は成長し、結果的に店舗全体の運営も改善されていきます。
一方、指示待ちや、「前の店ではこうだった」と固執することはチームの動きも悪くなるため、素直さや意欲を持つ人がお店づくりの重要な要素となります。
2:協力しあう文化を作ることができる
例えば、スタッフが知らないことや失敗があったとしても、同じチームに素直さや意欲がある人が揃えば、スタッフ間で教え合い、建設的な改善策を話し合うといった相乗効果が期待できます。ここで重要なのは、失敗を恐れずに報告できる雰囲気や制度をお店で整えておくことです。
率直な情報共有が進むことで、チーム全体が自発的に問題を解決する力が上がることが期待でき、何よりこのような「素直さ」や「意欲」を持つスタッフを抱えることで、忙しい時期でもチームの士気が高まります。
3:変化にも柔軟に対応できる
店舗を運営する中で、周囲の環境や店舗の経営状況など、様々な理由で接客方法やオペレーションなどスタッフの動き方を変える局面は多々あります。その時、「前はこうだったから」とその変化を否定するのではなく、その変化に合わせる素直さや意欲はオーナーとしても心強いものとなるでしょう。
ただし、スタッフに求めることや動き方を変えていく際、オーナーとしても責任を持って理由を説明することでチームの納得度はより高まるでしょう。

Kommentar des Vorgesetzten
アルバイトや社員といった、キッチンやホールといった役割で当然色々変わってきますが、やはりチームでの仕事なのでコミュニケーション力が最も重要だと考えます。調理などはスキルが重要な面がありますが、ここで伝えた素直さや意欲があれば、他のスキルは後から付いてくると思います。
面接で「素養」を見抜く5つの質問
ここでは「素養」を見極める具体的な5つの質問を紹介します。これらの質問は、過去の具体的な行動から「なぜそうしたか」「なぜその結論に至ったか」を聞き出すことで、スタッフとしての適性を判断できます。具体的な質問、評価ポイントと追加質問をまとめているので、面接時の参考にしてください。
質問例1
これまでの仕事やアルバイト(部活動など)で、ご自身が「これは失敗したな」と思う経験や、人から厳しく指摘・指導された経験があれば教えてください。その時、どう感じ、どう対応しましたか?
質問の意図・評価ポイント
- 【素直さ・自己客観視】 を評価
- 失敗や指摘を、他責・環境責にしていないか
- 事実を率直に認め、感情的にならずに受け止めているか
- 「叱られた=嫌だった」で終わらず、そこから何を学ぼうとしたか
深掘り・追加質問
- その経験から学んだことで、今に活きていることは何ですか?
- もし今、同じ状況になったら、どう行動を変えますか?
質問例2
この店は、覚えることが非常に多く、店独自のやり方もあります。新しいことを学ぶ時、あなたはどのように取り組むタイプですか?
質問の意図・評価ポイント
- 【意欲・素直さ】 を評価
- 教えてもらうのを待つ受け身の姿勢ではないか
- メモを取る、復習する、積極的に質問するなど、能動的に学ぼうとする意欲があるか
- 自分のやり方に固執せず、新しいやり方を受け入れようとする柔軟性(素直さ)があるか
深掘り・追加質問
- 逆に、どういう教え方(指示)だと、やりにくいと感じますか?
- 早く仕事を覚えるために、自分なりに工夫できそうなことはありますか?
質問例3
(もし店に来店・下調べしていたら)当店に対して、どのような印象を持ちましたか? また、たくさん飲食店がある中で、なぜ特に当店で働きたいと思ったのか、決め手を教えてください。
質問の意図・評価ポイント
- 【意欲・関心】 を評価
- 「時給が良い」「家が近い」といった条件面だけでなく、店自体(料理、雰囲気、接客、理念など)に興味を持っているか
- 応募にあたり、店について最低限の調査をしているか
- お店の「良い点」だけでなく、「もっとこうしたら」という改善点まで考えていれば尚良い
深掘り・追加質問
- (もし未経験なら)なぜ、あえて飲食業を選んだのですか?
- 当店のどんなところに、一番魅力を感じましたか?

Kommentar des Vorgesetzten
質問で答えてくれる内容も大事ですが、受け答えで「声がしっかり出ているか」が一番大事だったりします。お店にもよりますが、元気に「いらっしゃいませ!」と言えることが重要なので、面接でも、ニコニコ・ハキハキ自然に喋れる人は採用したくなります。逆に、声が小さい、髪型や服装といった清潔感に不安があると採用をためらうことがあります。
質問例4
仕事に慣れてきた頃、お客さまからお叱りを受けたり、クレームに繋がりそうな場面に遭遇したりしたら、どう対応しますか?
質問の意図・評価ポイント
- 【素直さ・当事者意識】を評価
- まず謝罪し、お客様の話を傾聴しようとする姿勢があるか(保身や言い訳が先に来ないか)・
- 自分の判断で完結させようとせず、すぐに先輩や社員に報告・相談しようとするか(素直に助けを求められるか)
- 「自分は悪くない」ではなく、「お店の問題」として捉える意識があるか
深掘り・追加質問
- (具体的なクレーム例を挙げ)こういう時、あなたならどうしますか?
- 上司や先輩に『報告しにくいな』と感じるミスをした時、どうしますか?
質問例5
飲食店では、接客以外にも、掃除、洗い場、地道な仕込みなど、裏方の作業も非常に重要です。そういった仕事に対して、どのように取り組みますか?
質問の意図・評価ポイント
- 【意欲・素直さ】を評価
- 華やかな仕事だけでなく、地味な作業の重要性を理解しているか。
- 「誰かがやるべき仕事」ではなく、「チームに必要な仕事」として捉えているか
- どんな仕事に対しても、前向きに取り組もうとする姿勢(意欲)があるか
深掘り・追加質問
- 今までで一番『きつい』『つまらない』と感じた作業は何ですか?それをどう乗り越えましたか?
- もしピーク時に洗い物が山積みになっていたら、まず何を考えますか?

Kommentar des Vorgesetzten
採用の難易度は店の状況によって変わります。新規オープンの店だと「新しい人間関係で働ける」「設備がきれい」といった理由で応募が多く来ますが、開店後、特に欠員補充などで人を採用する場合は応募数がそもそも少ないので、「どこまでなら妥協できるか」といった線引きも重要になってきます。
まとめ

面接はスキルや経験ではなく、候補者の「伸びしろ」、すなわち「素直さ」と「意欲」という「素養」を見抜くことが強いチームにつながります。本記事で紹介した質問も、候補者が過去にどう考え・行動してきたかを深掘りすることでこれらの素養を見極める参考としてお使いください。
採用は店舗づくりの重要な仕事です。スキルだけで判断せず、相手の人柄、つまり素養を見極め、採用のミスマッチが減るきっかけとなれば幸いです。















