【結論】飲食店の開業に関わる法律は4分野
食材を扱うとき、店舗をつくるとき、人を雇うとき、お金が動くときの4つです。

この分野は、業態や規模にかかわらずすべての飲食店が対象です。準備の最初に手をつけます。
残る3分野は、借りる物件と営業のスタイル、スタッフの有無、法人か個人かで変わります。客席と従業員を合わせて30人以上なら防火管理者の選任が、アルバイトを1人でも雇えば労災保険への加入が加わります。
分野ごとの表では、該当チェックの欄を上から読んでください。あてはまる行が1つもない分野は、読み飛ばして構いません。
①食材を扱うときの法律【全店舗】
営業許可がなければ、どんな業態でも開業できません。内装の図面ができた段階で、保健所へ事前に相談します。
| 法律名 | 該当チェック | 該当したら必要なこと |
|---|---|---|
| 食品衛生法 | すべての飲食店 | 保健所の営業許可 |
| 店舗ごとに食品衛生責任者1名 | ||
| HACCPに沿った衛生管理 | ||
| 食品表示法 | 弁当や総菜を容器包装して売るか(店内で調理して客に出すメニューは対象外) | 容器包装への表示 |
| 食品リサイクル法 | 前年度の食品廃棄物が会社全体で年100トン以上か | 発生量と再生利用の状況の報告 |
保健所の営業許可を取らずに営業すると、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象になります。食品表示法が関わるのは、弁当や総菜を作り置きして容器包装で売る店舗です。注文を受けてその場で容器に詰めるなら、表示は要りません。食品リサイクル法は食品廃棄物が年100トン以上になる会社が対象で、個人で開業する規模ではまず該当しません。

監修者コメント
食品衛生責任者を、たまたま資格を持っていたスタッフに任せている店舗をよく見ます。ただ、その従業員が辞めると、責任者が不在のまま営業を続けることになります。人の入れ替わりが激しい業種ですから、経営者ご自身か、長く働く見込みの方を選んでおいてください。
②店舗をつくるときの法律【物件と業態】
借りる物件と営業のスタイルで、必要な手続きが決まる分野です。
| 法律名 | 該当チェック | 該当したら必要なこと |
|---|---|---|
| 借地借家法 | 店舗の物件を借りるか | 物件資料と契約書で普通借家か定期借家かの確認 |
| 消防法 | 客席と従業員を合わせて30人以上になるか/調理に火を使う設備があるか | 防火管理者の選任と届出/消火器具の設置 |
| 風営法(深夜の酒類提供) | 深夜0時以降も酒類をメインで客に出すか | 深夜における酒類提供飲食店営業の届出 |
| 風営法(接待) | 客の近くに座ってもてなす行為があるか | 風俗営業の許可 |
| 景品表示法 | メニューや広告に「国産」「無添加」などの表記を使うか | 表記の裏づけになる資料の保管 |
| 健康増進法 | 店内を喫煙可にするか | 喫煙室の設置など(何もしなければ原則屋内禁煙) |
物件の契約では、普通借家か定期借家かで更新のしやすさが変わります。定期借家は契約期間が終わると更新されないため、貸主が再契約に合意しなければ退去することになります。どちらなのかは物件資料に書かれているため、内見を申し込む前に確かめてください。

監修者コメント
定期借家の物件は、最初から候補に入れない経営者が多くいます。内装にかけた費用を回収する前に、退去になるおそれがあるからです。物件資料に「再契約可」とあっても、再契約後の家賃は貸主が決め直せるため、同じ条件で続けられるとは限りません。
消防法で防火管理者の選任が必要になるのは、客席と従業員を合わせて30人以上のときです。人数の数え方は、入る建物で変わります。
- 店舗だけの建物:客席の数と従業員の数を足して判定します
- 雑居ビル:ビル全体の人数を合計して判定します。自分の店舗が20人でも、合計が30人以上なら対象です
風営法で許可が要るのは、客の近くに座ってもてなす「接待」があるときです。取引先をもてなす日常の接待とは別物で、次のように線が引かれます。
接待にあたる行為(風俗営業の許可が必要)
- 客の近くに座って談笑を続ける
- 客に歌を勧めて手拍子で盛り上げる
- 客の体に触れる
接待にあたらない行為(許可は不要)
- お酌をしてすぐその場を離れる
- カウンター内で注文に応じて酒を出す
- あいさつや短い世間話を交わす

監修者コメント
「うちは接待をしないから風営法は関係ない」と思い込んでいる方をよく見ます。実際に多いのは、22時閉店で始めた店舗が、売上を伸ばそうと閉店を1時に延ばすケースです。届出をしないまま営業を続けて、後から慌てて手続きに走ることになります。深夜0時をまたいで酒類を出す可能性があるなら、開業準備の段階で届出まで済ませておいてください。
許可と届出の申請の流れは「」でまとめています。

飲食店の開業手続き完全ガイド|届出一覧・費用・スケジュールを徹底解説【2026年最新】
【初めて飲食店を開業する方向け】開業準備からオープンまでの具体的な流れを解説。必要な手続きや資金計画、物件や設備選びのポイントを経験談を交えてお伝えします。
③人を雇うときの法律【雇うなら】
この分野は、1人で店舗を回すうちは関係ありません。アルバイトを1人でも雇った時点で、労働条件の明示と労災保険への加入が必要になります。
| 法律名 | 該当チェック | 該当したら必要なこと |
|---|---|---|
| 労働基準法 | スタッフを雇うか | 雇い入れ時の労働条件の明示 |
| 年10日以上の有給が出る人への年5日の取得 | ||
| 労災保険法・雇用保険法 | 1人でも雇うか(労災保険)/週20時間以上働く人がいるか(雇用保険) | 労働基準監督署とハローワークで労働保険の成立手続 |
| 健康保険法・厚生年金保険法 | 法人として開業するか | 年金事務所へ新規適用届の提出 |
| パートタイム・有期雇用労働法 | 正社員とパート・アルバイトが混在するか | 待遇差の理由を説明できる状態にしておくこと |
つまずきやすいのは、加入義務の線引きです。労災保険はスタッフを1人でも雇えば加入が必要で、雇用保険は週20時間以上働く人がいる場合に義務が生じます。健康保険と厚生年金は、法人なら代表者1人でも加入します。個人で開業した飲食店に、現在は加入義務がありません。2029年10月以降に開業し、常時5人以上を雇う場合は対象になります。

監修者コメント
スタッフを雇うとなると、確認しておく法律が一気に増えます。保険の手続きを「あとでいいや」と後回しにしたまま営業を始めてしまうケースが本当に多いです。個人で開業するなら、労働基準監督署とハローワークの2カ所を回ります。1日でまとめて済ませるつもりでも日をまたぐ可能性が高いので、最初の1人を入れる前に順番に回っておいてください。
④お金が動くときの法律【税金の届出】
個人として開業するなら、税務署へ開業届を出します。青色申告を選ぶなら、承認申請もあわせて提出します。客に法人や個人事業主が多い店舗は、インボイスに登録するかの判断も加わります。
| 法律名 | 該当チェック | 該当したら必要なこと |
|---|---|---|
| 所得税法 | 個人として開業するか | 税務署へ開業届の提出/青色申告を選ぶなら承認申請 |
| 消費税法(インボイス制度) | 法人や個人事業主が経費で使う売上があるか | 適格請求書(インボイス)を出せる事業者に登録するかの判断 |
よくある質問(FAQ)
Q. 調理師免許がなくても飲食店は開業できる?
できます。調理師免許は開業の必須条件ではありません。必要なのは、店舗ごとに1名置く食品衛生責任者です。調理師免許は調理の技能を証明する国家資格、食品衛生責任者は店舗の衛生管理を担う役割で、講習を1日受ければ資格がなくてもなれます。
Q. 食品衛生責任者は経営者本人がなる必要がある?
経営者本人が務める決まりはありません。講習を修了した従業員に任せられます。ただし食品衛生責任者は店舗ごとに1名を置く決まりで、複数店舗の兼任は認められません。2店舗目を出すときは、もう1人講習を受けてもらうことになります。
Q. 飲食店は「営業許可」と「営業届出」のどちらが必要?
営業許可です。飲食店は保健所の審査を受けて許可を取ります。営業届出は、包装された食品を仕入れて売るだけの店舗などが出す手続きで、調理して客に出す飲食店には使えません。
Q. 開業届を出さないと罰則はある?
開業届そのものの未提出に罰則はありません。ただし提出しないと青色申告が使えず、利益が出たときの税負担を軽くする手段がなくなります。
開業届の書き方は「飲食店の開業届|書き方・出し方・提出先を記入例つきで解説」でまとめています。

飲食店の開業届|書き方・出し方・提出先を記入例つきで解説
飲食店を個人で開業する方向けに、開業届の提出期限・提出先・必要なもの・書き方を記入例つきで解説。同時に出すべき青色申告承認申請書のコツや2026年の最新運用まで、これ一本で迷わず提出できます。
Q. 手続きは自分でできる? 行政書士・税理士に頼むべき?
営業許可と開業届は、自分でも進められます。風営法の許可のように法律の判断が絡む手続きと、節税の判断は、専門家に相談すると出し直しを避けられます。
まとめ
飲食店の開業に関わる法律は、食材を扱うとき、店舗をつくるとき、人を雇うとき、お金が動くときの4分野です。全店舗に必須なのは保健所の営業許可1つで、これがなければどんな業態でも開業できません。
客席と従業員を合わせて30人以上、深夜0時以降の酒類提供、スタッフの雇用。どれか1つでも該当すれば、手続きが1つずつ増えます。
個人で開業するなら開業届、物件を借りるなら借家の種類。この2つは、申請と契約の前に確かめてください。
法律の確認が済めば、次は集客と店舗運営です。
Respoは、予約管理から顧客管理まで飲食店の日々の運営をまとめて支えるサービスです。開業準備の段階からご相談いただけます。
★本記事の情報は2026年10月時点のものです。法令・制度は改正されることがあるため、最新情報は各公式サイト(e-Gov法令検索・厚生労働省・国税庁など)でご確認ください。



















