【結論】飲食店の物件選びで失敗する3大原因
3つの原因と、それぞれ契約前にやることは次のとおりです。
1つ目は、立地の見誤りです。人通りは昼と夜、平日と休日で大きく変わるため、複数の時間帯に現地を歩いて確かめます。
2つ目は、段取りと業者選びのミスです。物件探しは開業の6〜12ヶ月前から始めます。
3つ目は、内見・契約前の確認不足です。用途地域・ガス・電気・給排水・排気・消防の6点は、契約前に必ず確認します。
物件選びの失敗が取り返しにくい理由
飲食店の売上を大きく左右するのが立地です。同じメニュー、同じ接客でも、人の通り方が違えば来店数は大幅に変わります。
しかも、立地は契約後には変えられません。日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」によると、開業費用は平均975万円です。これだけの資金を投じたあとで移転を考えても、追加の借入は簡単には通りません。
物件を決めた瞬間に、席数と客単価、内装工事の費用、毎月の固定費まで同時に決まります。各要素の変えやすさは、次のとおりです。
| 要素 | 売上と運営への影響 | 変更のしやすさ |
|---|---|---|
| 立地・人通り | 非常に大きい | ほぼ不可 |
| 面積・レイアウトの下地 | 大きい(席数と動線を左右) | 難しい |
| ガス・電気・給排水の容量 | 大きい(出せる料理を左右) | 工事次第(費用は高額) |
| 用途地域・法令上の制限 | 大きい(営業の形を左右) | 不可 |
| 内装デザイン | 中 | 可能(費用はかかる) |
| メニュー・価格 | 中 | 容易 |
同じ見落としでも、契約前なら見送るだけで済みます。工事中に気づけば数十万円の追加費用が出て、開業後は移転しか残りません。
【原因1】立地の見誤りで起きる失敗
物件の失敗で最も多いのが、立地の見誤りです。現地に立たないと判断できない要素が多いからです。
昼・夜・平日・休日で変わる人通りの確かめ方
よくある失敗が、昼に一度見ただけで契約してしまうことです。オフィス街は休日にほとんど人が歩かず、住宅街は夕方以降に人が動き始めます。
見るべきは通行量だけではありません。年齢層や連れの有無まで見れば、自分の店に入る人かどうかの判断がつきます。最低限、ターゲット客が来店する時間帯には現地に立ってください。
用途地域と深夜営業の制限
立地の失敗で一番痛いのが、契約後に「この場所ではやりたい業態ができない」と判明するケースです。
深夜0時から午前6時に酒類をメインで出す業態は「深夜酒類提供飲食店営業」に当たり、都道府県の条例で立地が制限されます。住居専用地域や住居地域では原則として営業できず、例外の範囲は自治体ごとに異なります。
ラーメン店や定食屋のように主食を主に出す店は、深夜に酒類を出してもこの営業に当たりません。判断に迷うときは、所轄の警察署の生活安全課に事前相談するのが確実です。
用途地域による制限も見落とせません。第一種低層住居専用地域では店舗を兼ねた住宅しか建てられず、第二種低層住居専用地域でも店舗部分は150㎡までです。工業専用地域では、飲食店そのものが建てられません。
地下・2階・人通りの少ない立地の判断基準
地下や2階以上の物件は家賃を抑えられる一方、消防設備や排気ダクトで追加費用が出やすくなります。まず工事会社に見積もりを出してもらい、家賃の安さで追加費用を吸収できるか確かめます。予約や常連で席を埋められる業態なら、地下や2階でも成り立ちます。
エリアの選び方や人通りの読み方は「飲食店の立地の選び方」でまとめています。

飲食店の立地の選び方|業態別のいい立地の条件と調査手順
飲食店の「いい立地」の条件は、業態によって正反対です。1坪が生む売上には業態で2倍近い開きがあり、払える家賃の坪単価は1.0万〜1.9万円に分かれます。立地7タイプと向く業態、通行量から家賃の上限を出す5ステップ、契約前に確認する3つの窓口がわかります。
【原因2】開業までの段取りと業者選びの失敗
立地を見る目が養えても、探す順番を間違えると好条件の物件は手に入りません。段取りの失敗は「開業日から逆算していない」「情報の入り口が狭い」の2つに分かれます。
物件探しの6ステップと起きやすい失敗
物件探しの開始は開業の6〜12ヶ月前、設計から内装工事の完了まで3〜4ヶ月、許認可の申請は開業直前が目安です。
STEP1:コンセプトと条件整理
つまずきやすいのは、条件を絞れずに迷走することです。「家賃上限」「最低席数」「エリア」など、譲れない条件を先に決めます。
決め方は「コンセプト設計のステップと成功事例」でまとめています。

飲食店を成功に導く!コンセプト設計のステップと成功事例
飲食店を開業するにあたっては、自分の店で何を提供したいか、つまり「コンセプト」を明確にすることが重要です。コンセプトが曖昧だと、本当に来てほしいお客さまの姿が見えず、「誰のためのお店か」が曖昧になってしまいます。この記事では、頭の中のアイデアを具体的な言葉に落とし込むための具体的なステップと、明日から使える考え方をご紹介します。
STEP2:エリア・立地の選定
候補エリアを歩いて確かめます。判断の基準は、人通り・用途地域・採算の3点です。
STEP3:物件情報の収集
ポータルサイトだけでなく、業者にも希望を伝えて探してもらいます。好条件の物件ほど、表に出る前に決まっていくからです。
STEP4:内見・現地確認
失敗が集中するのが内見です。設備と法令の確認漏れは、契約後に工事のやり直しになります。
STEP5:申込と条件交渉
保証金・敷金、フリーレント(賃料が無料になる期間)、更新料は口約束で進めず、必ず書面で確認します。
STEP6:契約と開業準備
許認可の申請と内装工事の日程確保を並行して進めます。
開業全体の流れは「飲食店の開業手続き完全ガイド」でまとめています。

飲食店の開業手続き完全ガイド|届出一覧・費用・スケジュールを徹底解説【2026年最新】
【初めて飲食店を開業する方向け】開業準備からオープンまでの具体的な流れを解説。必要な手続きや資金計画、物件や設備選びのポイントを経験談を交えてお伝えします。
開業届の書き方は「飲食店の開業届」でまとめています。

飲食店の開業届|書き方・出し方・提出先を記入例つきで解説
飲食店を個人で開業する方向けに、開業届の提出期限・提出先・必要なもの・書き方を記入例つきで解説。同時に出すべき青色申告承認申請書のコツや2026年の最新運用まで、これ一本で迷わず提出できます。

監修者コメント
家賃を下げるとほかのテナントの賃料や物件の売値にまで影響するため、交渉するなら値下げよりフリーレントの延長が通りやすくなります。交渉では内装工事の日程表を見せて、工事期間中を無料にしてもらえないか相談してください。
物件情報を広げる業者選びのポイント
物件探しは、飲食店の物件を扱い慣れた業者に出会えるかで、紹介される物件の質が変わります。
| 見る点 | 選びたい業者 | 避けたい業者 |
|---|---|---|
| 扱う物件 | 飲食店の物件を多く扱う | 住宅物件がメイン |
| エリアの知識 | そのエリアの客層まで説明できる | 根拠なく「人気エリアです」と勧める |
| リスクの説明 | 契約前に不利な点も話す | 不利な情報を伏せて成約を急がせる |
見分けるには、ガス容量や排水、法令について質問し、具体的に答えられるかを確かめます。どんなに良い業者でも、店を営むのは自分です。複数社を比較し、「業者が言ったから」を理由に内見時の確認を省かないでください。

監修者コメント
業者同士は物件情報を交換しているため、何社回っても紹介される物件に大きな差は出ません。差がつくのは、好条件の物件が出たときに真っ先に連絡が来るかどうかです。業者は「すぐに決められる客」から順に連絡するので、最初の面談で事業計画と資金の目処、連帯保証人の内諾まで伝えておきましょう。
【原因3】内見・契約前の確認不足で起きる物件トラブル
契約前の確認を飛ばすと、工事のやり直しや開店の延期に直結します。
設備の確認漏れ(ガス・電気・給排水・排気)
ガス容量:ガス管が細いと、増設に数十万円の費用と約2週間の工期が必要になります。告知済みのオープン日を動かす事態にもなりかねません。
電気容量・給排水:容量不足で厨房機器が同時に動かない、水圧が弱い、排水が流れにくいなどの不具合が出ます。
排気ダクトの経路:ダクトを屋外まで通す経路が取れず、業態の変更を迫られることもあります。
消防・法令の確認漏れ
消防の手続きは、開業直前に慌てて動くと間に合いません。東京都の場合、使用開始の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を消防署へ提出します。間仕切りの設置などの工事を伴うなら、着手する7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」も必要です。
前入居者が残した不備も見落としがちです。ダクトの油汚れが残ったままだと消防検査で改善指導を受け、内装後の手戻りになります。看板は、大家やビル共有部のルールで撤去を求められる場合があります。設置の可否は契約前に書面で確かめてください。
契約条件と居抜き特有の落とし穴
賃料・保証金・敷金・フリーレント・更新料は、口約束を残さず契約書の文言で確かめます。退去時の原状回復も、スケルトンに戻す義務があるかどうかを契約前に読み合わせてください。居抜きなら、譲り受ける設備を1点ずつ書面に落とし、動作確認まで済ませてから契約します。

監修者コメント
居抜きの厨房機器には、リース品が混ざる場合があります。持ち主はリース会社なので、造作譲渡で引き継いだつもりでも自分の所有にはならず、リース会社と買い取りや契約の引き継ぎを手続きする必要があります。造作譲渡の契約前に、どの機器がリース品かを不動産会社に確認してください。
造作譲渡の相場と注意点は「居抜き開業で押さえる5つのポイント」でまとめています。

居抜き開業で押さえる5つのポイント|費用・契約・営業許可
居抜きで飲食店を開業するときに押さえる5つのポイント。内装費はスケルトンより約4割安くなる一方、設備を買い取る造作譲渡料が別にかかります。リース品の見分け方、2本立ての契約、営業許可の取得まで確認できます。
内見・契約前チェックリスト
項目は、必要度で3つに分けています。
全員必須
- 用途地域で営業できるか
- ガス・電気・給排水の容量が足りるか
- 排気ダクトを屋外まで通せるか
- 消防設備に前入居者が残した不備がないか
- 賃料・保証金・敷金・原状回復の条件を書面で確かめたか
業態によって必須
- 深夜0時以降に酒類を出せるか(バー・居酒屋など)
- グリストラップが必要か(油を多く使う業態)
- 席数に見合う面積とトイレ数があるか
- 居抜きの設備が今の施設基準を満たすか
できれば確認
- 看板を出せる位置があるか
- ビル共有部のルールや営業時間の制限がないか
全員必須の5項目は、業態を問わず確認します。業態によって必須の4項目は、深夜に酒類を出すか、油を多く使うかで要否が変わります。グリストラップ(厨房の排水から油やごみを分離する設備)は、自治体の条例で設置を求められる場合もあるため、下水道の担当課に確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 居抜きなら営業許可はそのまま使えますか
原則として使えません。営業許可は施設と営業者に対して出るため、新たに取り直します。ただし2023年12月13日以降は、事業の全部を譲り受けた場合に限り、地位承継届の提出で引き継げます。物件と造作だけを引き継ぐ一般的な居抜きは、この対象になりません。
Q. 非公開物件はどうやって探しますか
希望条件を具体的に伝え、複数社に声をかけておきます。条件が明確なほど、表に出る前の物件を紹介してもらえます。個人開業でも、設備や法令の確認まで含めて業者を通したほうが漏れは減ります。
Q. 連帯保証人や保証会社は必要ですか
事業用物件では、保証会社の利用を求められるのが一般的です。初回保証料は月額賃料の0.5〜1ヶ月分程度が1つの目安ですが、保証会社やプランで大きく変わります。個人開業では、連帯保証人も併せて求められる場合があります。
Q. 保証金・敷金・原状回復費はいくら必要ですか
賃料の6〜12ヶ月分が目安ですが、十数ヶ月分に達する契約もあります。
まとめ
- 立地は、昼と夜・平日と休日を自分の目で確認します。用途地域はエリアを決める前に調べます。
- 段取りは、開業の6〜12ヶ月前から動き、情報はポータルサイトだけでなく業者経由まで広げます。
- 契約前は、用途地域・ガス・電気・給排水・排気・消防の6点を、書面と現地で確かめます。
- 内見の予定が入っているなら、上のチェックリストを印刷して持って行ってください。
物件が決まると、次の課題は開業後の予約と顧客の管理に移ります。Respoは、予約受付から顧客情報の管理までを1つにまとめたサービスです。開業前でも資料請求と個別相談を受け付けています。(資料請求/相談はこちら)
★本記事の情報は2026年10月時点のものです。用途地域・条例は改正されることがあるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。




















