飲食店の立地の選び方|業態別のいい立地の条件と調査手順

飲食店の立地の選び方|業態別のいい立地の条件と調査手順

店舗運営2026/10/212026/10/20New

駅前の物件は家賃を払いきれるか不安になり、家賃の安い物件だと客が来るかを読めません。物件情報を並べたまま、この2件の間で手が止まっている方は多いはずです。

立地だけは、開業したあとで選び直せません。メニューも価格も内装も後から変えられますが、場所を変えるとなると内装工事をやり直し、借入をもう一度組み直すことになります。

やっかいなのは、「いい立地」の条件が業態によって正反対になることです。1坪が1ヶ月に生む売上を業態別に見ると、中華料理店の18.7万円に対してそば・うどん店は9.7万円で、2倍近い開きがあります。同じ家賃の物件でも、払える業態と払えない業態にはっきり分かれるわけです。

物件を申し込む前に終わらせておきたい作業は、次の3つです。 - 自店の業態に必要な立地条件を書き出す - 候補地の見込み売上から、払える家賃の上限を出す - 候補地で営業できるかを、契約前に自治体と警察署へ確認する

【結論】いい立地は業態で決まる

  • 回転率で稼ぐ店は通行量から客数を拾うので、人が流れていない場所では席が埋まりません。
  • 客単価で稼ぐ店や名前で指名される店は通行量に頼らず、2階でも地下でも住宅街でも成立します。
  • 家賃を月商の10%に収めると、払える坪単価は1.0万〜1.9万円まで開きます。
  • 坪単価の高い駅前に耐えられるかどうかは、業態の坪あたり売上で決まります。
  • 物件を見に行く前に、自店の業態が1坪からいくら生むのかを1つの数字にしておいてください。

下の表は、稼ぎ方の3タイプ別に、必要な条件と向く立地を並べたものです。

稼ぎ方必要な条件向く立地
回転率型(客数で稼ぐ)通行量の多さ駅前・繁華街/オフィス街/商店街
客単価型(単価で稼ぐ)落ち着いて過ごせる席住宅街/2階以上・地下
目的来店型(名前で選ばれる)予約が入る知名度立地を選ばない

立地7タイプと向いている業態

立地は、客の集まり方で3つのグループに分かれます。下の表は、7タイプをグループごとに分け、特徴を並べたものです。

客の集まり方立地特徴
人の流れで集める駅前・繁華街賃料は高いが客数を読みやすい
オフィス街土日と年末年始に売上が落ちる
商店街通りごとに通行量の差が大きい
生活圏と車で集める住宅街近所の客の再来店で席が埋まる
ロードサイド駐車場の台数が席数の上限
郊外通りがかりの入店は望めない
家賃を下げる代わりに見つけにくい2階以上・地下予約で客が来る業態向き

人の流れで集める立地(駅前・繁華街/オフィス街/商店街)

駅前・繁華街は賃料が高い代わりに、客数の読みが立てやすい場所です。オフィス街は、土日と年末年始に売上がまるごと落ちます。月商は週5日で組み立てる前提です。商店街はやや読みにくく、同じ「商店街」でも通行量の桁が違うことがあり、実測しないと判断できません。

いずれも売上が通行量に連動します。客単価を抑えて客数で積む業態が向く立地です。

生活圏と車で集める立地(住宅街/ロードサイド/郊外)

住宅街で席を埋めるのは、通りがかりではなく近所に住む客の再来店です。ロードサイドは、駐車場の台数がそのまま席数の上限になります。台数が足りない時間帯は、店内が空いていても客が入ってきません。郊外は賃料を下げられますが、通りがかりの入店はほぼ期待できないと見ておくのが安全です。

この3つは、店を目的に来る客だけで席が埋まるかどうかで決まります。

家賃を下げる代わりに見つけにくくなる立地(2階以上・地下)

通行人から見られるのは看板と階段の入口だけなので、ふらっと入ってくる客はまず期待できません。個室主体の居酒屋やバー、カウンターだけの専門店は、予約で客が来ます。通りがかりの客を最初から当てにしないので、見つけにくさは弱点になりません。

候補地での売上を数字で出す【5ステップ】

STEP1 必要な立地条件を書き出す

業態さえ決まっていれば、必要な条件は自然に絞れます。物件を見に行く前に、次の5項目を書き出しておきます。

  • 席数:厨房と客席の割り振りで、必要な坪数が決まります。
  • 通行量:回転率で稼ぐなら必須、予約で来店されるなら不要です。
  • 客層:年齢・性別・単独かグループかを1つに決めます。
  • 営業時間:深夜0時を回るかどうかで、選べる用途地域が変わります。
  • 駐車場:ロードサイドなら、台数が席数の上限です。

ここまで決めてから物件情報を開けば、合わない物件はその場で外せるはずです。

STEP2 商圏(客が来る範囲)を決める

商圏とは、店の売上の大半を生む客が住むか働くかしている地理的な範囲のことです。ここを決めないまま通行量を数えても、何と比べた数字なのかがわかりません。

目安になるのは市区町村です。調査では、一般消費者向けの小規模事業者のうち約7割が、商圏を「店と同じ市区町村」と答えています(出典:中小企業庁「2024年版小規模企業白書」第2-1-8図)。

ただし徒歩で来る客が中心なら、範囲はもっと狭く取ります。不動産広告の「徒歩1分」は道路距離80メートルなので、徒歩5分でも400メートルです。この半径で地図に円を描き、円に入る住戸数と事業所数を数えてみてください。

STEP3 通行量を数える

曜日と時間帯を決めて店の前に立ち、10分だけ人を数えます。平日と土日で、自店の営業時間帯に最低3回ずつ数えたいところです。

そして、数えるのは人数だけではありません。年齢層や性別、単独かグループか、どちらの向きに歩いているかまで記録します。顔ぶれが自店の客層とずれていれば、客足は伸びません。

下の表は、通行量の記録から見込み売上と家賃の上限までを、順に出す計算式です。

出す数字計算式
1時間の通行量10分間の実測×6
1時間の客数1時間の通行量×入店率
1日の売上1時間の客数×営業時間×客単価
1ヶ月の売上1日の売上×営業日数
家賃の上限1ヶ月の売上×10%

STEP4 見込み売上を計算する

見込み売上は、必ず2つの計算で出して突き合わせます。片方だけだと、都合のいい数字に寄ってしまうためです。

1つ目は、STEP3の表の計算です。ただし入店率(前を通った人のうち店に入る客の割合)は候補地の見えやすさと業態で変わるため、置き方ひとつで見込み売上が大きく変わります。

そこで2つ目に、坪数から出します。一般飲食店が1坪から1年に生む売上は、中央値158万円でした(出典:日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査(飲食店・宿泊業)」)。30坪なら、1ヶ月あたり395万円が目安になります。

2つの数字が2倍以上ずれたら、入店率の置き方を疑ってください。

STEP5 家賃の上限を出す

家賃は、契約したあとで下げられません。しかも飲食店は、原価と人件費だけで売上の68.1%が消えます。残る31.9%から家賃10%を引くと、水道光熱費も広告費も借入の返済も、21.9%から払うことになります。

業態別の坪あたり売上から逆算すると、払える家賃はこうなります。

業態1坪あたりの月の売上家賃の坪単価の上限
すし店19.0万円1.9万円
中華料理店18.7万円1.9万円
酒場・ビヤホール15.5万円1.6万円
西洋料理店13.7万円1.4万円
一般飲食店(全体)13.2万円1.3万円
喫茶店11.7万円1.2万円
日本料理店10.6万円1.1万円
そば・うどん店9.7万円1.0万円

売上は同じ調査の中央値を12で割った金額で、家賃の坪単価に、共益費と解約時に返らない保証金の分は含めていません。

候補物件の坪単価がこの上限を超えているなら、席数を増やすか、客単価を上げるか、その物件を諦めるかの3択になります。

監修者コメント

監修者コメント

Point

家賃は、開業1年目で売上が一番少ない月にも払えるかで判断してください。開業直後は店の名前が知られておらず、見込んだ客数に届かない月が続きます。家賃は売上に関係なく毎月同じ額が出ていくため、売り上げが少ない月でも支払いを続けられるよう、運転資金を数か月分は別に確保しておいてください。

内見で確かめるべき項目

図面と写真では、客が店に気づくかどうかまでは判断できません。現地では次の5項目を確かめ、1つでも当てはまらなければ見送りを考えてください。

  • 客が歩いてくる向きから看板が見えるか
  • 看板が電柱や街路樹に隠れていないか
  • 入口の段差と扉の重さが負担にならないか
  • 外から店内の様子が見えるか
  • ピーク時に競合店が満席になっているか
監修者コメント

監修者コメント

Point

内見の前に、ストリートビューの「その他の日付」で候補地の過去の写真を見てください。その区画に何の店が何年続いたかがわかります。2〜3年おきに看板が変わっている物件は、客が定着していない場所です。夏の写真を見れば、街路樹に看板が隠れないかも確かめられます。私は、前の店がなぜ撤退したのかを不動産会社に聞いてから内見に行きます。

店の見え方と入りやすさを確かめる

看板や店構えが見えるかどうかは、正面からではなく客が歩いてくる向きから確かめます。看板が電柱や街路樹の裏に隠れる角度は、実際に歩いてみないと気づけません。入りやすさは、入口の段差と扉の開けやすさ、それに外から中の様子が見えるかどうかで決まります。

周辺の飲食需要を確かめる

競合店は、ピーク時間に外から席数と空席を数えます。そのエリアで実際に外食している客数が、見込み売上を出すときの根拠になります。大手チェーンが集まっている場所は、客数の見込みを立てやすい場所です。しかし大手が必要とする客数は個人店と桁が違うので、席数や営業時間をそのまま真似はできません。

契約でつまずく箇所は「飲食店の物件選びで失敗する3大原因」でまとめています。

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契約前に確認する3つの窓口

物件情報だけでは、その住所で自店の業態を営業できるかを判断できません。候補地が数件に絞れた時点で、次の3つの窓口へ問い合わせます。

【自治体の都市計画課】用途地域

用途地域は13種類あり、住居系では建てられる店舗の床面積に上限があります。第二種低層住居専用地域なら150㎡まで、第一種中高層住居専用地域なら500㎡までです。工業専用地域には、飲食店そのものを建てられません(出典:国土交通省近畿地方整備局「用途地域」)。

30坪はおよそ99㎡なので、面積だけを見れば住居系でも収まります。とはいえ建物と道路の条件は物件によって違うので、番地まで伝えて都市計画課に確かめるのが確実です。

【所轄の警察署】深夜酒類提供飲食店営業の届出

午前0時から午前6時の間に主として酒類を提供するなら、営業を始める10日前までに、所轄の警察署を経由して公安委員会へ届け出ます。住居地域などは、条例で深夜営業そのものが禁じられています。物件を申し込む前に、深夜0時以降も酒を出せる地域かどうかを所轄の警察署に確かめてください(出典:宮城県警察「深夜における酒類提供飲食店営業の届出」)。

【保健所】施設の基準

施設基準は都道府県の条例で決まるので、同じ都道府県で候補地を変えても基準は動きません。エリアを比べる段階では気にしなくて構いません。

ただし図面が固まる前には、一度相談しておいてください。手洗い設備の位置や客席と厨房の区画を、図面の確定後に指摘されると内装工事のやり直しです。

開業の手続き全体は「飲食店の開業手続き完全ガイド」でまとめています。

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よくある質問(FAQ)

Q.飲食店の売上は立地で8割決まるのか

「売上の8割が立地で決まる」という言い方に、根拠となる公的な統計はありません。それでもこの言い回しが残っているのは、立地だけが開業後に選び直せないからです。メニューも価格も内装も営業時間も、開けてから直せます。数字の当否はともかく、一度決めたら動かせない条件だという意味では、他と同じ扱いはできません。

Q.駅から徒歩何分までなら許容できるか

判断材料になるのは徒歩何分という数字ではなく、駅から候補地までの間に同じ客単価の店が何軒あるかです。手前に同じ価格帯の店が並んでいれば、徒歩8分の物件を選んでも客は徒歩3分の店で足を止めます。

Q.競合が多いエリアは避けるべきか

競合が多いことは、そのエリアに外食の需要がある証拠でもあります。ピーク時間に競合店の席数と空席を数え、需要が席数を上回っているかを見てください。避けたいのは、同じ業態で同じ客単価の店が並んでいる場合です。価格でしか比べてもらえなくなり、知名度のない開業直後の店が不利になります。

Q.商圏分析ツール(GIS)は個人でも使えるか

GISは、地図の上に人口や世帯の統計を重ねて表示するシステムのことです。総務省統計局と統計センターが出しているjSTAT MAPなら、登録なしで使えます。候補地を中心に円を描けば、円に入る人口・世帯数・年齢構成がそのまま出ます。

まとめ

物件選びで手が止まるのは、家賃の安さと客数の見込みのどちらを取るかが、業態によって変わるからです。1坪が生む売上には業態で2倍近い開きがあり、その10%が家賃の上限になります。自店の坪あたり売上さえ押さえておけば、候補地は数字で絞れます。

候補が2〜3件に絞れた時点で、番地を伝えて自治体の都市計画課と所轄の警察署に問い合わせてください。聞くのは用途地域と、深夜0時以降も酒を出せるかどうかの2点です。申し込んだあとで条件に合わないとわかっても、立地は選び直せません。

★本記事の情報は2026年10月時点のものです。最新の内容は、各公式サイトと管轄の窓口でご確認ください。

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