防火対象物使用開始届とは?
防火対象物使用開始届とは、建物やその一部を新たに使い始めるときに、使う本人が用途・床面積・利用する人数を消防署へ届け出る書類です。消防署はこの届出から火災の危険性を見積もり、必要な消防用設備がそろっているかを確かめます。
内装工事をしない居抜きの物件でも、届出は必要です。使う人が変われば、消防署が把握している建物の使われ方も変わるためです。
下の図で、自分の店舗が届出の対象になるかを確認できます。

防火対象物使用開始届の書き方
用紙は、管轄する自治体の消防局サイトからダウンロードできます。届出の根拠が市町村の火災予防条例のため、用紙のデザインは自治体ごとに違います。書く内容は、ほぼ共通です。大阪市や岡山市のように、階ごとの消防用設備を書く「棟別概要」の別紙が付く様式もあり、この欄は管理会社か消防設備業者に確認して埋めます。
下の図は、各自治体の様式に共通する欄を1枚にまとめた飲食店の記入例です。図に振った①〜⑨の番号ごとに、各欄に書く内容を確認できます。

① 提出日
窓口に持ち込む日を書きます。元号で書く様式が多いため、用紙の表記に合わせてください。
② あて先(消防署名)
管轄する消防署長のあて名を書きます。署の名称は、自治体の消防局サイトの管轄区域一覧で確認できます。
③ 届出者
個人なら氏名・住所・電話番号を、法人なら名称と代表者名、主たる事務所の所在地を書きます。電話番号は、日中つながる番号にしてください。消防署は記載内容の確認を電話でするため、つながらないと審査が止まります。
この欄に内装業者の名前を書いてしまう間違いが、最も多く起きます。届出者は、その場所で営業する本人です。内装業者や消防設備業者、ビルのオーナーの名前は書きません。
④ 建物の情報(所在地・名称・構造・階数・面積)
建物全体の数字を書く欄です。構造・階数・延べ面積(建物全体の各階の床面積の合計)は、賃貸借契約書か管理会社からもらった資料で確認できます。
⑤ 用途に供する部分(テナント名・入居する階・床面積)
用紙に「用途に供する部分」と印字された欄には、自分が借りる部分だけの数字を書きます。④の延べ面積と混同したまま提出すると、差し戻しになります。
店舗名は「〇〇ビル3階/店舗名」のように建物内の位置まで示し、床面積は内装業者の図面に入っている数字を使ってください。
⑥ 用途
用途は、法令で決まっている建物の区分から選んで書きます(区分の一覧は消防法施行令別表第一)。客席で飲食物を出し、遊興や接待を伴わない店舗は「3項ロ」です。事務所や住宅が混ざる雑居ビルでは、建物全体が「16項イ」と判定されることもあります。迷う場合は事前相談のときに確認してください。
※事前相談とは、内装工事の前に図面を持って消防署へ行き、用途の区分や必要な消防用設備を確かめてもらう相談のことです。
⑦ 人数(客席と従業員)
収容人員の欄がある様式と、ない様式があります(東京都の様式にはありません)。欄がない様式でも、収容人員は事前相談と、防火管理者が必要かどうかの判定で使います。数えるのは席数ではなく、法令で決まった数え方で出す「収容人員」です。飲食店(3項ロ)なら、次の3つの合計になります。
| 数えるもの | 数え方 |
|---|---|
| 従業員 | 営業中に働く人数をそのまま数える |
| 固定式のいす席 | いすの数を数える。長いすは正面幅を0.5mで割り、端数は切り捨てる |
| 固定されていない席と立ち飲みスペース | 床面積を3㎡で割る |
飲食店が入る建物は、全体の収容人員が30人以上になると、テナントごとに防火管理者を置く義務が生じます。判定には同じビルの他のテナントと合算した人数を使うため、多くの雑居ビルはすでに対象です。自分の店舗の人数で決まるのは講習の種類で、30人以上なら甲種、30人未満なら乙種で足ります。
⑧ 工事の種別と使用開始日
工事の種別は、選択肢のどれか1つにチェックを入れます。テナントの内装工事は「改築」ではなく「その他」を選び、括弧内に「事業所入居に伴う間仕切り変更工事」のように内容を書きます。東京都の様式では、この内容を「事業所の場合」の段に書きます。工事をしない居抜きでも空欄にせず、「その他(内装工事なし)」としてください。
「使用開始年月日」には、お客様を入れて営業を始める日を書きます。什器の搬入日や試運転の日ではありません。予定日で構いません。提出の期限は、この日から逆算します。
⑨ 設計者・施工者
設計者と施工者は別の欄です。それぞれに業者の名称と担当者名、電話番号を書きます。工事をしない場合は、空欄のままで構いません。
※ 消防署が記入する欄
「※」が付いた欄は消防署が記入します。空欄のまま提出してください。
提出期限と提出の進め方
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期限 | 開業日の7日前まで |
| 部数 | 正本と副本の2部 |
| 提出先 | 建物の住所を管轄する消防署の予防課 |
| 手数料 | かからない |
2部出すのは、1部を消防署が受け取り、もう1部に受付印を押して返してもらうためです。この控えが、届出を済ませた証明になります。
下の図は、事前相談から開業日までのスケジュールです。

表の期限は、受け付けてもらえる最も遅い日です。届出のあとには消防検査があり、指摘が出れば直して再検査になります。開業日が決まったら、着工より前に事前相談を受けられるよう、逆算して予定を組んでください。
添付する図面
添付する図面は、必要度で3つに分かれます。
- 全員が用意する:建物の配置図と各階平面図です。
- 建物や工事の内容によって求められる:立面図・断面図・室内仕上表(壁や天井の材料の一覧)・厨房機器リストです。
- 消防署の判断で追加される:消防用設備の設計図面などです。
下の図は、各階平面図に書き込む要素です。

図の4つの要素が平面図に入っていれば、窓口で追加を求められる回数は減ります。
内装業者との契約の時点で、「消防署へ提出する図面一式」を依頼内容に入れてください。着工後に追加費用を請求されずに済みます。居抜きで工事をしない場合は、管理会社に既存の図面が残っていないか確認してください。
提出先と事前相談
用紙を書き始める前に、管轄の消防署の予防課で事前相談を受けてください。相談に手数料はかかりません。受付は平日の日中だけのため、電話で日時を決めてから行くと待ち時間が減ります。

監修者コメント
事前相談で言われたことは、担当者の名前と日付を添えてメモに残してください。私の店舗では、消防検査に来た担当者が相談のときと別の方で、「問題ない」と言われていた点を指摘されましたが、メモを見せて相談の経緯を伝えたところその場で確認を取ってもらえました。
郵送や電子申請ができるかは、自治体で違います。東京消防庁は、電子申請の窓口を用意しています。名古屋市のように、副本の返却が要らない場合だけ郵送を受け付ける自治体もあります。
内装業者に提出を頼む場合
用紙の記入や窓口とのやり取りに手が回らない場合は、内装業者に書類の作成と提出を頼めます。内装業者は店舗の図面を持っているため、添付する図面の用意もまとめて任せられます。内装業者に依頼する場合でも、③の届出者の欄には自分の名前を書いてもらってください。
代行の費用は、見積書では「消防申請」「官公庁届出」などの項目名で載ります。同じ項目名でも、書類の作成だけの場合と、提出や消防検査の立ち会いまで含む場合があります。届出の代行だけで10万円ほどになることもあるため、契約の前に、この項目の金額とどこまで含むのかを業者に確認してください。
提出後の消防検査
受け付けてもらうと、消防署が記載内容と図面を確認します。そのあと職員が店舗に来て、図面と同じ位置に設備が付いているかを確かめる「消防検査」を行います。検査の日程は、受付のときに窓口で相談して決めてください。
工事のあとで設備の追加を求められる例に、天井まで届く間仕切りがあります。天井まで区切った部分は別の部屋として扱われ、感知器の追加が必要になることがあります。間仕切りの高さを決める前に、事前相談で感知器が要るかを聞いてください。

監修者コメント
検査の前日は、消火器と避難通路の前に物が置かれていないかを確かめてください。開業直前は、仕入れた食材や備品の段ボールが通路に積み上がります。私は通路の幅を指摘され、片付けてから再確認を受けることになりました。
消防署へ出すほかの届出
飲食店の開業で消防署へ出す書類は、防火対象物使用開始届だけではありません。工事の内容と人数によっては、次の届出も必要です。
| 届出 | 必要になる場合 |
|---|---|
| 防火対象物工事等計画届出書 | 内装工事や間仕切りの変更をする(東京都では工事に着手する日の7日前まで) |
| 防火管理者選任届 | 建物全体の収容人員が30人以上になる |
| 消防用設備等設置届出書 | 消防用設備を新しく付ける |
開業までに必要な手続き全体は「飲食店の開業手続き完全ガイド」でまとめています。

飲食店の開業手続き完全ガイド|届出一覧・費用・スケジュールを徹底解説【2026年最新】
【初めて飲食店を開業する方向け】開業準備からオープンまでの具体的な流れを解説。必要な手続きや資金計画、物件や設備選びのポイントを経験談を交えてお伝えします。
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飲食店の営業許可証の取り方を、費用・期間・申請書の書き方まで記入例つきで解説。保健所への申請から施設検査・交付までの5ステップ、2021年改正の施設基準や必要書類、有効期限と更新のポイントまで最短で理解できます。
よくある質問(FAQ)
Q.防火対象物使用開始届を出し忘れて開業してしまいました。今からでも出せますか
出せます。気づいた時点ですぐ管轄の消防署へ連絡してください。未届のまま営業を続けると、立入検査で指摘を受けます。消防用設備の不足が見つかれば設置の命令が出て、自治体によっては消防局のサイトで建物名が公表されます。あとになるほど営業しながらの改修になり、工事費も休業日数も増えます。
Q.開業後に個人店から法人に切り替えたら、防火対象物使用開始届の出し直しが必要ですか
必要になる場合があります。届出者の欄は店舗を使う本人の名義のため、個人から法人へ名義が変わると、使う人が変わったと扱われます。出し直しが要るかは自治体で扱いが違うため、法人に切り替える日が決まった時点で、管轄の消防署へ確認してください。
Q.使用開始日が予定からずれた場合はどう対応しますか
管轄の消防署へ連絡してください。検査の日程を組み直す必要があるかどうかを教えてもらえます。届出の内容を書き換える必要があるかは自治体で扱いが違うため、自己判断で放置しないでください。
Q.保健所の営業許可とどちらを先に進めるべきですか
順番はありません。どちらも図面が固まる前の事前相談から始めます。保健所は厨房の設備配置、消防署は避難経路と消防用設備を見るため、指摘の中身は重なりません。着工前に両方へ図面を持って行けば、内装のやり直しをまとめて避けられます。
まとめ
防火対象物使用開始届は、その場所で営業する本人が、管轄の消防署へ出す届出です。迷う欄は、賃貸借契約書と内装業者の図面を並べれば埋まります。期限は開業日の7日前です。内装工事をするなら着工の7日前までに工事の届出も要るため、事前相談は図面を引いている段階、着工より前に済ませてください。開業日が決まったら管轄の消防署に電話をして、事前相談の日時と必要な添付図面を確認してください。
開業前の手続きは、消防署・保健所・税務署と窓口が分かれ、期限もそれぞれ違います。開店したあとは、予約の受付と席の管理、日々の売上集計が同時に始まります。準備で使った工程表と同じように、運営で使う情報も1つの画面に集めてください。
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